whkr’s diary

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2024年の4月までに観た面白い映画(『デデデデデストラクション 前章』はまだやってるよ、という話)

前回のエントリに続き、2024年に入ってから現時点までに観た面白い映画を並べていきたい。
なお、韓国映画はハズレ率0%で弾数もあるので、別建てにして紹介したい。


デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章』 (公式サイト

ゴールデンウィーク中もまだ前章が上映しているので、面白いアニメ映画が観たい人には観にいってほしい。というかこのエントリを今上げる理由はこの映画を勧めるためである。

明日にはすべて壊されているかもしれない青春の不穏さと明るさを、いっときも緩むことなく映し続けることに成功している。この、統一された雰囲気にずっと浸れる感覚は非常に心地がいいものだ。
なお、私同様に原作の浅野いにおが好きでない人もいるだろうが、心配はいらない。たしかに原作で彼が熱心に描いた「政治」の描写はデモとレスバと陰謀論しかなく、まるで世界がツイッターでできているかのような薄っぺらさは読んでて恥ずかしくなるくらいだが、映画ではその部分を適切にオミットし、それに接するキャラクターの心情の方に重きを置くことで欠点をカバーしている。やはり脚本の吉田玲子の手腕は確かなものであった。
5/24に上映する『後章』の出来しだいでは今年のベストアニメ映画連作になるかもしれないので、見ておいて損はないと思う。


『アーガイル』 (公式サイト

キングスマン』のマシュー・ヴォーン監督のスパイものだが上映期間が短く、もっと話題になるべきだと思ったエンタメの良作。
荒唐無稽などんでん返しと冗談みたいなアクションシーンが特徴なんだけど、どれも丁寧に布石を置いた上で出されるから、納得して楽しまされてしまうんだよな。
特に「理想のスパイ」としてエージェント・アーガイルの幻影が見える理由が、ヒューマニズムに根差していて感動してしまった。
キングスマン』ファンに向けた小ネタもある。


『流転の地球 太陽系脱出計画』 (公式サイト

『三体』の原作者による工学SFの映画化。
「地球崩壊の危機を前にデジタル空間に逃避するような軟弱者はいらん! 生命体なら物理で解決!」というメッセージと、発言を急かされながらその内容を逐一監視されるシーンの緊張感が『三体』と通じている。やっぱりサイバーパンク自由主義的な思想なんだな。
3時間近く巨大なメカがひたすらガッチャンガッチャンしているので、そういうのが好きな人には非常にお勧め。
おそらくめちゃくちゃ製作費がかかってるだけあって、エンドロールもすごく長かった。


オッペンハイマー』 (公式サイト

世界的な天才を集めたプロジェクトの目的が世界を破壊する兵器だなんて、ほんと昭和って野蛮な時代だよな。オッピーも現代に生まれてたらザッカーバーグみたいにクソ広告で金を稼いでいたのだろうか。
原爆の被害描写については比喩や演出を用いて、描かずに描くテクニックがきまっていてとても好きなのだけど、これは実際の被害をある程度知っていることを前提とした手法なので、その知識がなく漫然と見過ごしてしまう人にはもったいない映画だと言えよう。
難解だと言われてたので身構えて行ったけど、特にそんなことはなく緊張感を持ったまま3時間観ることができた。


『私ときどきレッサーパンダ』 (公式サイト

2022年に、ディズニーが映画館でさんざん予告を流しておきながら劇場公開せずディズニープラスのみで配信するという暴挙に及んだことでミソが付いた作品。
2024年に改めて全国で劇場公開したが、ディズニー系列のシネマイクスピアリ以外の映画館では朝一とかの観づらい時間帯しかやっていなくて、いまだに続く確執を感じた。
しかし、映画自体はとても完成度が高かった。現代の寓話として、整理されたストーリー構成と親しみやすいビジュアルデザインはほぼ完璧と言ってもいいだろう。
あまりにしっくり来るので、昔なにかのアニメか漫画でこういう話を見たような既視感を覚えるくらいである。
それにしても、予告でやっていた『インサイド・ヘッド2』とテーマが「思春期」で丸かぶりなのだが、こんな真っ当な作品を先に出されてむこうは大丈夫なのかと余計な心配をしてしまった。